逆玉の輿

愛知県名古屋市といえば、全国のうちでも名高い老舗が軒を連ねるとして有名です。
老舗ですから、言うまでもなく財産家が多い街と言い換えることもできるでしょう。
そして“金のしゃちほこ”で馴染みがあるように、昔から見栄を張るタイプが多いことでも有名です。
そんな県民性が影響して、老舗の資産家に生まれた一人娘となれば、有名な女学校へ進学させることが想像できます。
そして一人娘のバックには、将来有望な婿養子との縁談を目論む両親の存在があります。
しかしながら、昔のように名高い学校を卒業したからといって、それに見合た男性との結婚が約束されている時代ではありません。
変わらないのは、こうした財産家の一人娘は、今も尚、親族の厳しい眼差しを感じなければならないという点。
そうはいっても、現代にはインターネットでのSNSコミュニティが、男女の出会いの場になる時代です。
そして、インターネットに疎い年配層ですから、一見して愛娘がパソコンに向かいインターネットを活用している姿を見れば、“うちの娘は先進的で賢い”と感心してしまうものです。
しかし、実際に娘がしていることは、すべて親族が歓迎することばかりとは限りません。
例によって、これから話を進めていく男性は、ある名古屋のご令嬢と今まさに交際しているということです。
ご令嬢としてみれば、“出会い系サイトで知り合った男性との交際”についてです。
その男性は、ネット上の無料メル友サイトで、ひょんなことから名古屋に住むの資産家の娘と仲良くなりました。
男性は、ごく一般的な家庭に育って、東京の大学を出てそのまま就職したという環境。
そんな男性ですから、ご令嬢の日々の憂鬱に驚きを隠せません。
彼はご令嬢の相談メールに返信してみました「家が多きことって、俺からすれば嬉しいけれどなあ」と。
しかし、ご令嬢は頑なに姿勢を崩さず、『広すぎるのは、かえって生活に不便なことこの上ですよ』という返信を男性に寄こしました。
それをパソコンの画面を介して読む男性は、一瞬視界を自分の部屋に移し、返事を打ち始めます。
「2DKの部屋に俺は住んでるんだけれど、きっと君も住んでみると“狭い”って感じるし、息苦しいって感じるんじゃないかな。
一人だから何とかすめている感じだよ(^−^;)」。
しかし、ご令嬢からの返事は思いもよらないものでした。
ご令嬢曰く『部屋が狭いのなら、それだけあなたを“近くに”感じられるということでしょう?』。
この返事に、気分を良くした男性は“この娘を落とそう!”と攻略を試みることにしました。
まずは手始めに写真付きのメールを送信。
ほどなくして、ご令嬢から送られてきた彼女の顔写真も手元に届きました。
“来年で30歳かあ・・・”とちょっと考えた後、しかし男性は思い直しました。
“あわよくば、逆玉の輿を実現できるかもしれないってことか”。
きっかけは、かけ離れた生活環境でしたが、男性とご令嬢の関係は意外にも順調だといいます。
男性が資産家の跡取りとなって“広い部屋の不便さ”を実感する日々も、そう遠くないのかもしれません。

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